PC-98DO+の修理|コンデンサ交換

「電源が入らないPC-98DO+本体」のアルミ電解コンデンサを交換して動くようになるか検証します。

尚、この作業はろくに知見のない私が「なんとかPC-98DO+を修理して動かしたい」と強く願い行った作業の記録であり、間違いや危険な行為をしている可能性があります。

また、あなたがこのページを参考に作業をされた結果、機器の破損や健康被害等の不利益を被っても、それに対する保証などはないということをご承知おきください。特に電源部分などは高圧電流感電などの危険性があります。よろしくお願いします。

PC-98DO+本体正面

1.PC-98DO+の修理/ 電源基板のコンデンサ交換

感電しないために

電源の基板には容量の大きいコンデンサが使われていて感電が怖いため、自分は通電させたら1日以上おいてから分解します。

分解している途中でも、基板の裏が見えてきたら、持ち手側が絶縁された針金をつかい、帯電していないか確かめながら作業を進め、基板が取り出せたらマルチメーターの電極をコンデンサの脚に当てて帯電していないことを確認してから作業開始します。

上記の工程で感電を避けられるかどうかわかりませんが、自分はこうやっています。

PC-98DO+の電源基板

アルミ電解コンデンサの特定と選定

まず基板上に印刷されている番号とコンデンサの種類を記録します。

  • 「C606」→ KMG 105℃ 200V 680μF(M)
  • 「C610」→ KME (M)105℃ 50V 10μF
  • 「C611」→ KME (M)105℃ 50V 10μF
  • 「C623」→ KME (M)105℃ 50V 0.47μF
  • 「C653」→ nichicon 105℃ 10V 1500μF
  • 「C654」→ nichicon 105℃ 25V 560μF
  • 「C655」→ nichicon 105℃ 25V 100μF
  • 「C656」→ Rubycon -55℃~+105℃ 50V 100μF
  • 「C657」→ Rubycon -55℃~+105℃ 25V 47μF
  • 「C664」→ nichicon 105℃ 10V 1500μF

岩崎浩文氏の電子書籍を参考にアルミ電解コンデンサーの代替品を用意します。

V(ボルト)とμF(マイクロ・ファラッド)の値が同じものを。同じ数値のものがない場合はμFの数値を合わせることを優先し、Vは元々のものより大きな数値のものを。μFの数値が同じものがない場合は、もともとの数値より少し大きなものを。というかんじで用意します。

古いアルミ電解コンデンサの撤去作業

古いコンデンサの足元の半田をはんだ吸い取り線で取り除き、コンデンサを外していきます。

半田ごての温度を320℃〜370℃のメモリの間に設定し、コテを当てる際にはフラックスをしっかり塗って、半田吸い取り線をコテで半田に押し付けること約5秒ほど。

フラックスがシュワっとなって、吸い取り線の銅の色が半田の銀色に染まり、手をのけるとスルーホールが見えています。

半田ごての小手先を換えてからは、しっかり半田ごての熱が伝わるようで、ハンダ吸い取り器をつかわずとも取れていきます。

膨らんでしまったコンデンサがいくつかありました。

半田ごてHAKKO FX600の温度設定 半田を溶かす前に、フラックスをしっかり塗布します 半田吸い取り線で古い半田を除去しています 古い半田を除去しています 膨らんでしまった古いアルミ電解コンデンサ 大容量コンデンサの新旧

↑ 200V 680μFのコンデンサのアタマが若干膨らんでいます(左)。

新しいアルミ電解コンデンサの半田付け作業

古いアルミ電解コンデンサを撤去した基板をフラックスクリーナーなどで綺麗にした後、あたらしいコンデンサを半田付けします。

極性に気をつけてコンデンサの足をスルーホールに通し折り曲げて固定し、余った足を切り落とした後、半田ごてを当てるスルーホール付近にフラックスを塗ります。

準備ができたら、

「1.半田ごてをスルーホールとコンデンサの足に当ててしっかり熱を伝える(2秒ほど)」 → 
 「2.熱されたスルーホールに半田を押し付けるように溶かしていく(1秒ほど)」 → 
 「3.溶けた半田とスルーホール、コンデンサの足に熱を伝える(3秒ほど)」

というかんじで半田付けしていきます。

ゴッドはんださんこと野瀬昌治氏の著作、「目で見てわかるはんだ付け作業」によれば、3〜9ミクロンほどの厚さを持つ銅とスズの合金層を形成することが肝要であり、その最適な条件は250℃の温度で約3秒間の溶融時間であるとのこと。これをアタマに浮かべながらはんだ付け作業に勤しみます。

なお熱が加わって透明化したフラックスは絶縁性をもつので、基板上にそのまま残しても問題ないそうですが、原液の生のフラックスは母材を腐食させてしまったり、電気的な導通があるそうなので、フラックスクリーナーできれいに拭き取ります。

半田付け作業前にフラックスを塗布します 半田を当てる前に、スルーホールとコンデンサの足を熱します 半田づけ完了

電源の動作確認

新しいコンデンサを用意するときに「古いコンデンサと同じ容量の新しいコンデンサの大きさは、同じか小さいだろう」との思い込みで、何も考えずに用意したのですが、200V680μFの長寿命タイプのコンデンサの径が、古いものよりも大きくて焦りました。

無事電源基板のコンデンサ交換が終わったので、PC-98DO+を組み直して動かしてみます。

本当は全部のコンデンサ交換が終わってからでないと新たな不具合を引き起こすかもしれないのですが、ついやってしまいました。

88ハチハチモードで起動すると「タダシイ ディスクヲ イレテクダサイ」と表示が出ます。

一方、98キューハチモードで起動するとおかしな網目の画像が上から下へループして表示されます。

再度分解して本体基板のアルミ電解コンデンサの交換も進めていきます。

アルミ電解コンデンサ交換済みの電源基板 88モードで起動したPC-98DO+ 98モードで起動したPC-98DO+の表示がおかしい

2.PC-98DO+の修理/ 2階基板のコンデンサ交換

コンデンサの特定と選定 (耐熱85℃→105℃へ)

2階基板に使われているアルミ電解コンデンサは22個です。このコンデンサを特定していきます。

PC-98DO+のメイン基板2F部分
  • 「C1」→ CE85℃(M)531 25V 100μF ルビコン
  • 「C2」→  85℃ 25V 22μF nichicon
  • 「C3」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C4」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C5」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C6」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C7」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C8」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C9」→  85℃ 25V 22μF nichicon
  • 「C10」→  85℃  50V 3,3μF nichicon
  • 「C11」→ CE85℃ 50V 1μF ルビコン
  • 「C12」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C13」→ CE85℃(M)33 50V 1μF ルビコン
  • 「C14」→ CE85℃(M)33 50V 1μF ルビコン
  • 「C15」→ CE85℃ M 4057 50V 4.7μF ルビコン
  • 「C16」→ CE85℃(M)531 25V 100μF ルビコン
  • 「C17」→ CE85℃(M)512 50V 10μF ルビコン
  • 「C20」→ CE85℃ M 4057 50V 4.7μF ルビコン
  • 「C21」→ CE W(M)519 85℃ 25V 220μF ルビコン
  • 「C79」→ CE85℃ M 4057 50V 4.7μF ルビコン
  • 「C80」→ CE85℃ M 4057 50V 4.7μF ルビコン
  • 「C81」→ CE85℃ M 4057 50V 4.7μF ルビコン

これらの交換品を用意するにあたり、耐熱温度が高い方が寿命が長いことや、性能も大差ないようなので耐熱105℃のもので揃えてみました。

コンデンサの交換作業

いざコンデンサ交換を始めるときに基板上のコンデンサを見ていて、交換するものよりもコンデンサの背が低いことに気がつきました。

2階基板を1階基板と接続する際、干渉してしまう恐れがあるのでコンデンサを寝かして半田付けすることとします。

電源基板のコンデンサ交換と同じ要領で作業していきますが、うまく半田が溶けてくれないものも出てきました。

時間の経った半田は成分が変質して溶けにくくなってしまうものがあるそうで、その際には古いハンダの上に新しい半田を溶かし込んで加熱するという、追い半田が有効だそうなので、その追い半田をして半田除去をしていきます。

頑固な半田が基板表側の足にもついているコンデンサもあります。ていねいに表も裏もフラックスを塗って追い半田をして外していきます。

2F基板上のアルミ電解コンデンサ 2F基板のアルミ電解コンデンサ除去作業 アルミ電解コンデンサ除去後の2F基板 アルミ電解コンデンサを寝かして設置した2F基板

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3.PC-98DO+の修理/ 1階基板のコンデンサ交換

コンデンサの特定と選定

つぎは1階基板です。コンデンサは9つです。これを特定します。

PC-98DO+の1F基板
  • 「C1」→ CE W M4431 85℃ 25V 22μF Rubycon
  • 「C2」→ CE W M4431 85℃ 25V 22μF Rubycon
  • 「C3」→ CE W M544 85℃ 25V 220μF Rubycon
  • 「C4」→ CE W M4431 85℃ 25V 22μF Rubycon
  • 「C5」→ CE W M4431 85℃ 25V 22μF Rubycon
  • 「C6」→ PF (M) 105℃ H9029 50V 1.5μF
  • 「C7」→ 85℃ D.E.99 HW 50V 4.7μF SANYO
  • 「C8」→ 85℃ A8940 50V 10μF nichicon
  • 「C9」→ (M)85℃ 25V 47μF □SME

1階基板は耐熱85℃と105℃が混在していますが、105℃で統一し用意します。

コンデンサの交換作業|表面実装部品取り外しキット活躍す

さてこちらも半田吸い取り線と半田ゴテで古いコンデンサ除去作業を進めますが、「C4」と「C5」のコンデンサが外れません。

表、裏、と追い半田を繰り返し、吸い取り線で吸っても全く動じません。

ここで活躍してくれたのが「表面実装部品取り外しキット」です。

この「表面実装部品取り外しキット」は融点が58℃の糸ハンダと、専用フラックス、半田吸い取り線のセットです。これを使って追い半田をして、、、無事外せました。

こういった作業に手馴れた方なら「しゃらくさい」と温度をあげた半田ごてで手早くできるのかもしれませんが、不器用な自分では ガラクタ同然のモノ 貴重な骨董PCを壊してしまう恐れが十二分にあるため、大事をとりました。

表面実装部品取り外しキット 1F基板 1F基板

4.PC-98DO+の修理/ 動作確認

コンデンサ交換が終わり、祈りを込めていざ電源オン、、、したら、うーん、挙動がコンデンサ交換前と同じでした。

PC-98DO+の外面表示はおかしいまま

斯くなる上は、不具合がある箇所を特定していく作業に移ることとなりますが、とりあえずはここまでで一区切りすることとします。

 ではみなさまも、よきレトロPCライフを。