SONY-Reader PRS-T3S|E-inkディスプレイ交換
もう6年ほど使っているSONY Readerの表示がおかしくなっているのに気づきました。
慌ててソニーのウェブサイトで修理対応などを調べてみると、保証対象外となっているではありませんか。
Ali-ExpressでSONY-Readerのディスプレイが販売されているのを見つけたので、これを購入し自分で交換してみることにしました。
== 目次 ==
- 1.症状
- 2.分解
- 3.液晶ディスプレイ交換|組み戻し
- 4.動作確認
- 5.総括
・手でフリックする位置のインクが薄い。
・全体的に表示が薄い。
・裏蓋をはずす
・殻割り
・フラットケーブルとWi-Fiアンテナの解除
・液晶ディスプレイと金属板の分離
・表面2番目のパネル枠の準備
・液晶ディスプレイと金属板の接着
・小型基板の接続
・表側のパネル枠
・裏側のパネル
・滲んだ液晶
・正常動作を確認
・E-inkディスプレイの経年劣化?
・使用した工具や道具
・自炊ファイル閲覧端末としてのソニーリーダー
1.症状
手でフリックする位置のインクが薄い
一番初めに気がついたのは、手でページめくりをする位置のあたりの表示がまだらに薄くなっていることでした。
スキャンしたもとのファイルのせいかと思い確認してみるも、元ファイルに問題はなく、これはディスプレイの問題だと気づき、Ali-Expressで交換するパネルを注文しました。
全体的に表示が薄い。
Ali-Expressをお使いのかたはわかると思いますが、注文してからモノが届くまで時間がかかります。さらに届いた後もそれなりに忙しく、作業に取りかかったのは3ヶ月ほど後のことでした。
自分はSONY-Readerを2台購入していたので、その間もう1台の方を使っていました。
やがて修理する時間が取れたので、久方ぶりに問題のあったSONY-Readerの電源を付けてみると、表示がまだらに薄くなっていた箇所の表示が元どおりになっているように見えます。
放置していて治ってしまったのか、と思いながら弄ってみると、部分的ではなく全体的に表示が薄くなっているのです。
(今から思えば、そのまだらなディスプレイの状態を写真に撮っておけば、皆さんに見ていただけたのにと後悔しきりです。)
下記の写真が交換前の状態です。左が正常なディスプレイ。右がこれから交換するものです。
画像をクリックしていただければ拡大されます。著作権の問題があれなので、青空文庫の「老人と海」です。
2.分解
まず電源を落としてから、分解作業にとりかかります。
裏蓋をはずす
まず裏蓋を外して、マイクロSDカードを取り外し、さらに電池のカバーを外します。
上記の写真では金属製の工具を使って電池カバーのシールを持ち上げていますが、本体を傷つけないよう、樹脂製のスパッジャーなどを使う方がいいと思います。
このシールは粘着面がシールの端だけになっており、再利用が容易です(むしろ貼り直し前提のような気がします)。大事に保管して、組み立て直したら貼り直します。
殻割り
続いて10本のビスを外します。精密ドライバーが必要です。
ビスを外したら樹脂製の工具を側面の溝に差し込み、スライドさせるようにして本体裏側の爪と、表側の枠についている爪受け口を解除します。両側面と下側をスライドさせれば外れます。上側はWi-Fiアンテナがあるので気をつけてください。
フラットケーブルとWi-Fiアンテナの解除
まず、5つのビスを外し、液晶からのフラットケーブルを外します。
フラットケーブルの接続端子は、白い部分を持ち上げるようにして外します。
Wi-Fiアンテナは表側の枠の窪みに、粘着テープで固定され収まっています。
アンテナと粘着テープの間に工具を差し込みながら、持ち上げるようにして外します。
ここまできましたら、物理ボタンが配置された表面一番上のパネルを外します。
下記写真の爪を解除して、粘着テープのところにスパッジャなどを差し込みながら外します。
液晶ディスプレイと金属板の分離
物理ボタンが配置される表側のパネルの下には、さらに黒い枠のパネルがあり、これに液晶ディスプレイの表側が粘着テープで固定されています。
この黒い枠を外すと、金属板と液晶ディスプレイの間が見やすくなり、カッターなどを差し込んでこれを外し易くなるのですが、自分はそれがわからず、この黒い枠がついた液晶パディスプレイごと、ヘラなどを差し込んで粘着テープを剥がして行きました。
接着剤だかテープだかでついているだけなので、ヘラのようなものを入れて慎重に剥がしていきます。
液晶ディスプレイ交換作業のなかで、ここがいちばん難儀しました。
以下、おっさんの涙ぐましい作業をごらんください。
まず小さな基板についている2本のビスと一つのフラットケーブルを外します。
このフラットケーブルは端子から引き抜くだけです。ケーブルの下にヘラなどを差し込み上から指で押さえながら、丁寧に引き抜きます。
また中央よりのビスの下にはフィルムが通っていますが、自分の場合は固着していました。これも工具などでコジって外しておきます。
自分はここまでやってから、金属板と液晶ディスプレイの分離作業に取り掛かりましたが、今の状態では裏側のフラットケーブルのみで繋がっている状態です。作業の途中でこの小型基板のフラットケーブルが抜け落ちました。
幸い破損はなかったのですが、皆様は裏側のケーブル端子をはずして作業した方が良いと思います。向かって下側(小型基板側)のケーブル端子だと接続する時やりづらいので(自分はこちらが外れました)、上側のケーブル端子を外すのがいいと思います。
ヘラなどを差し込んでいくのは、下記写真の波打つ形状の樹脂製パネルと金属板の間です。
粘着力が強く、樹脂製のパネルが割れないかと冷や冷や作業しました。前述しましたが、もしこのパネルが先にはずせるのでしたら、外してから作業に取り掛かった方が絶対楽です。
この強力な粘着力では、古い液晶ディスプレイの破損は必至です。割れたディスプレイで、手や目を傷つけるおそれがあるので、手袋や保護メガネなどを使って作業してください。
金属板に残る粘着テープの残滓をできるだけ取り除きます。この時、自分はやってしまったのですが、金属板を傷つけると、そのから出たカスが金属板下の基板に移り、電子機器類の足などについてショートさせたりしてしまうかもしれませんので、金属板を傷つけないようにするのがいいと思います。
粘着テープの残滓は、無水エタノールを使って拭こうとしたら、どろっとトロける感じになりました。無理にきれいにしなくても、凸凹がない程度になればいいのではないでしょうか。
3.液晶ディスプレイ交換|組み戻し
表面2番目のパネル枠の準備
液晶ディスプレイを貼り付ける樹脂製パネル枠についている古い粘着テープを撤去して、新しく両面テープを設置します。
新しい液晶ディスプレイの保護シートを外し、ディスプレイの表面側を、樹脂製パネル枠に、上側のツラを合わせて貼り付けます。
液晶ディスプレイと金属板の接着
綺麗にした金属板に両面テープをつけ、そこへ枠をつけた液晶ディスプレイを貼り付けます。
再度ディスプレイ交換の可能性を考えて、控えめに両面テープを配置しました。
この両面テープに液晶ディスプレイの裏面を接着させるのですが、液晶でスプレイ裏面のフラットケーブルを金属板の切り込みに通して、さらに上側に凸凹の突起と受け口があるので、それをあわせて接着させます。
ディスプレイと金属板を接着させたら、裏返してフラットケーブルを接続します。
この時フラットケーブルが引っ掛かったりして、変なところで折れ曲がったりしないように気をつけてください(経験者は語る)。
小型基板の接続
取り外しておいた小型基板を再接続します。
フラットケーブルの接続は表裏の2箇所、ビス2箇所。うち1箇所はフィルムを挟み込んでビス止めです。
表側のパネル枠
一番表面のパネル枠をつけます。
古い両面テープを剥がし、あたらしい両面テープで貼りなおします
このときやはり上側で位置合わせをし、WiFi-アンテナを戻しつつ貼り合わせます。
裏側のパネル
裏側のパネルを10箇所ビス止めします。
あとは電池の上にシールをもどして、カバーの裏蓋をつけるだけですが、この状態で動作確認してみます。
4.動作確認
滲んだ液晶
いざ電源ボタンを押すと、液晶パネルの表面の下部に少し滲みが出ただけで、表示が変わりません。
おかしいぞ、とリセットボタンを楊枝で押したり、電源ボタンを再度おしたりしてもかわりません。
LEDの黄色点滅は確認できるのですが、表示が変わりません。
どこかいじって故障させてしまったのかなぁ、と不安になりながら、再度開腹してケーブル接続などを確認してみることとしました。
正常動作を確認
再度開腹して見てみると、ディスプレイのフラットケーブルが、端子にきちんと接続されていませんでした。
これをきちんと接続し直し、裏返して画面を見てみると、正常動作していました。
今までの努力が無にならなかったことに安堵しつつ、充電池カバーのシールを貼り、カバーの裏蓋を取り付けて完了です。
E-inkディスプレイの経年劣化?
ディスプレイ交換後のSONY-Readerともう一台のSONY-Readerを見比べていて、なんとなく違和感があります。
「ディスプレイ交換後のSONY-Readerに比べて、交換しなかったSONY-Readerの表示が薄い ?」
下記写真を見てみてください。右側がディスプレイ交換したもの、左側が6年ほど使ってきて問題がなかったものです。
写真だとわかりづらいかもしれませんが、やっぱり6年経っているほうは肉眼で見ると表示が薄いです。
ほぼ同時期に購入したソニーリーダーでしたが、自分用に購入したものは、PDFファイル化した書籍閲覧用にガンガン使ってきました。純正カバーのへたり具合で使用度が分かりますでしょうか。
家人用に購入したもう一台は、旅行に行く時ぐらいしか使用せず、という感じだったのですが、新品のディスプレイに交換したものに、同じファイルを表示させて比べると、明らかに表示が違っています。
6年も経てば、使っていなくてもE-inkディスプレイも経年劣化する、ということでしょうか。
世に現存するソニーリーダーはみな古いものであるはずです。
久しぶりに使ってみたソニーリーダーの表示をみて、「こんなものだったかな」と思っても、もしかしたら其のソニーリーダーは100%の性能を出していないのかもしれません。
ソニーリーダーの付属品や、どのように使うかを知りたかったら、こちらの記事をどうぞ
5.総括
使用した工具や道具
- ・精密ドライバー
- ・スパッジャ、ヘラなど
- ・カッター
- ・両面テープ
- ・皮手袋
- ・保護メガネ
両面テープはもともと自宅にあったもののなかから、厚みが無い物を使用しました。ソニーリーダーに使われていたもの同じような薄さで粘着力なども似ていると感じたため、「これです」とリンクでも貼りたかったのですが、残念ながら内側のラベルもない状態の年代物で、どこの製品かわかりませんでした。
精密ドライバーは#00を使用。カッターと皮手袋、保護メガネは、古いディスプレイを金属板から剥がす際に使用しました。
皮手袋はもともとDIYや登山などで使うため、自宅に何種類も常備してあるのですが、一番厚みがあるものを使いました。
不安定な状態で力をいれてカッターを使うため、手を怪我することを懸念していましたが、実際滑ってカッターの刃が当たっていたので、手袋がなければ手を切っていたでしょう。
ディスプレイは割れるとかなり細かくなり尖ったものが刺さります。自分は親指に小さな穴を開けてしまいました。これが何かの拍子に目に入る危険性がありますので、保護メガネは絶対してください。
以前何かのレビューでお見受けしたのですが、スマホなどを開けるための樹脂製の開腹工具について、「すぐボロボロになる」というような意見がありました。
しかし、これは「(スマホなどの)対象の製品を傷つけないように、ある程度の軟弱性をもって開腹工具をつくり、対象の製品が傷つく前に、工具側が変形する(壊れる)ように、との設計思想で作られているとおもわれます。
もう生産されていないソニーリーダーのパネルを傷つけることに比べれば、工具を買い換えることなど安いものです。とはいえ、工具類も大事に使うにこしたことはありません。
自炊ファイル閲覧端末としてのソニーリーダー
生産も販売も終了したソニーリーダーですが、自炊し電子書籍化したファイルの閲覧用として今でも大変重宝しております。
PCなどのUSB端子からの充電でないと受け付けない、などの特異な仕様のおかげか、充電池も全くへたりを感じません。
もし皆様のお手元に、人から譲り受けたソニーリーダーがあり、「表示がいまいちなんだよな」などと感じておられましたら、E-inkディスプレイの交換を検討されてはいかがでしょうか。