マップケース|防水かつ雪山登山で使えるものを

沢登りに憧れて始めた登山は、いつしか積雪期の登山までするようになりました。

登山では、ヘッドライト、地図(方位磁石)、雨具を忘れるべからずと教わりました。

このうちの一つである地図を効率的に使用するためにはマップケースが大変有効です。

厳しい登山を行っている人が、実際どのように地図読みを行なっているのか同行して拝見してみたいものですが、自分は以下のようにして地図を使っています。

== 目次 ==

自分が登山で使う地図

自分が主に登山で使うのは昭文社の「山と高原地図」、国土地理院発行の「地形図」です。

山と高原地図

書店の地図コーナーに置いてあります。登山用の地図として最もポピュラーなのではないでしょうか。

毎年実踏調査の上で更新されており、最新の情報がのっています。

登山道へのアプローチなど、里に近いところほど状況変化が激しいので、バス停の場所とかコンビニなどの情報が地味に助かります。

縮尺は1:50000です。

耐水加工されているので取り扱いも楽です。

昭文社の「山と高原地図」耐水性のある「山と高原地図」

地形図

自分は主に書店で購入していますが、取り扱いのある書店が限られます。在庫がなければ注文取り寄せになります。

また登山用品店にもあったりしますが、人気の山域の地図が切らしている場合などもあるので、いずれにせよあわてず余裕を持って購入しておくのが望ましいです。

日本地図センターではネット注文ができるようです。

沢登りや、積雪機に尾根をたどって稜線を目指したりする際に重宝します。地図に書き込むのも容易で、必要に応じてコースや目標など書き込んで準備しておきます。

縮尺1:25000のものを主に使っています。

過去にさんざん濡らしてきましたが、インクのにじみなどを経験したことはありません。

国土地理院発行の地形図

使い方から選ぶマップケースの条件

行動山域のみコピーなどして手持ちしたり、ポケットに入れたりして使うこともありますが、コピーしたものは、汗や雨などで滲んでしまいます。

コピーの濡れ対策だけでしたらご家庭にあるジップのついたビニールでことたります。

ビニール袋の延長にあるようなマップケースですと、畳んだりポケットにねじ込む際にかえって取り回しがしづらくなります。

襷掛たすきがけできるようなもの

積雪期の登山では手袋をしています。

地図を見るたびにファスナーのついたポケットから出し入れしていたらいくら時間があっても足りません。

また、ロールアップして(丸めて)コンパクトにまとめておけるマップケースなどもありますが、これも手袋をしたままでは扱いにくいことこの上ありませんし、方位磁石コンパスも一緒に入れられません。

ですので、首から下げておける(もしくはシュリンゲなどを付けられる)ものを、ザックを背負った上で、襷掛けして行動しています。

強風の中、手袋で持っている地図が手から離れてしまっても飛ばされない為にこうしています。

積雪期に登山で使う手袋

頑丈なもの

稜線などで強風に吹かれていると、煽られたマップケースが体にずっと叩きつけられていることもあります。

いつだかマップケースに一緒に入れておいた方位磁石がこわれて、地図がオイルまみれになったこともありました。

また雪のかぶったハイマツの中でもがきながら行動する時もあります。

このように使いますので、簡単に破れてしまうものやストラップが切れてしまうようだと役に立ちません。

裏表ともに透明なもの

縮尺1:50000の「山と高原地図」と1:25000の「地形図」を使っていることは前述しましたが、全体の行程を見れるように表に「山と高原地図」をいれ、その中でも地図読みをしながら行動する箇所の「地形図」を裏面にいれたり、もしくは全行程を地形図でカバーできるよう裏表に配したり、マップケースの大きさを無駄なく使えるよう裏表透明なものを使います。

このようなことを考えて、SealLineバーグハウスのマップケース を使っています。

下準備

地図を効果的に使う為には高度計と方位磁石が欠かせません。

高度計

高度計機能付きのプロトレックという腕時計をつかっています。

気圧変化で高度を測定するのですが、使用するまえに補正が必要です。

自宅の高度を知っておけば出発前に補正すればいいので楽です。

方位磁石コンパス

方位磁石をマップケースの中に入れておけば、マップケースをみる一つの動作で方位も確認できて無駄がありません。

プロトレックなどの腕時計にも方位磁石の機能はついていますが、積雪期登山の服装では腕時計を出すのも面倒です。

手袋の上やヤッケの上から腕時計をする、という方法もありますが、低温環境下では電池消耗も激しく表示がおかしくなるという経験もしている為、自分の場合腕時計はなるべく外気にさらさないようにしています。

また前述のようにマップケースの中の方位磁石を壊した経験から、小さな方位磁石も予備に持っていきます。

ホワイトアウトしてしまうような状況下では、たった今来た道を引き返すのも方位磁石がなければ尾根を取り違えてしまいます。

マップケースで地形図とコンパスを一緒に見る
↑ マップケースで地形図とコンパスを一緒に見る
マップケースで地形図とコンパスを一緒に見る
↑ ホワイトアウトで方向感覚も失われる

偏差

地図では上が北になっていますが、方位磁石が実際に指し示す北とはズレがあります。

シビアな地図読みが必要な場合には磁北線をあらかじめ引いておきます。

地図にはその地域の偏差が記されています。この偏差角度の線を地図に書き込みます。

偏差角の数値は60進法だそうです。→ 下記の写真の場合、6と50/60度 → 約7度と判断。

分度器をつかって約7度西へ傾いた角度で、斜線を書き込んでいきます。

1:25000図では4センチで1kmとされる為、わかりやすいよう4センチ間隔で磁北線を引いておきます。

地形図に記された偏西角
↑ 地形図には偏西角が記されています
地形図に磁北線を記す
↑ 地形図に偏西の角度で磁北線を引きます
地形図に磁北線を記す
↑ 4センチ(1km)間隔で磁北線を引いておきます

普段から使ってこその地図

GPSナビゲーションからスマホのアプリまで、機器類の発達は目を見張るものがあります。

しかし、低温環境では電池切れの心配から、これらの機器類だけに頼る気にはどうしてもなれません。

地図を補助する道具としては大いにありだと思いますが、使い勝手や情報量などでは地図に代わるものはないと思います。

また、普段からよく使っていないと地図読みの力もつちかわれません。

簡単な山行などでは地図はザックに入れておき、コピーしたものを手持ちしているのですが、地図をもたずに登られる方が結構いらっしゃるようで道を尋ねられたときにこのコピーをあげたりしたことがあります。

あるとき道を尋ねられた際、地図をあげようとしたら「地図はザックに入っている」と言われたかたがいらっしゃいましたが、これではいつまで経っても地図読みがうまくならないでしょう。普段使いしてこその地図です。

山行計画を立てているときから地図をみていてもあれこれ考えて楽しいですし、山行中に予定外の行動を強いられた際、地図読みでコースを決めなおし、半信半疑の前進の末ドンピシャで目的地にたどり着いたときなどは実に達成感があります。

先達の失敗から学べる本2選

自分は沢登りを始めたとき、それが登山であるという意識がありませんでした。その後それが登山行為であると認識したときに、様々な遭難について書かれた本を読むようにしました。

本多勝一「リーダーは何をしていたのか」

同書では五つの遭難事故を紹介しますが、その一つとして1980年の逗子開成高校山岳部の北アルプスの遭難を取り上げています。

ワカンジキやツェルト、スコップなどの問題点とともに、磁石を持たずに行動した点を指摘。薬師岳愛知大遭難(13人死亡)でもやはり磁石を持たずに行動したことを原因としています。

この時の逗子開成高校山岳部の6人は磁石を持たなかった結果、テントに戻る方角とは90度それた谷底へ進み、全員凍死しました。

本多氏はホワイトアウトを "荒天の冬山は昼でも天地の区別がつかぬ「白い闇夜」" と表現しています。

この逗子開成高校山岳部の遭難や薬師岳愛知大山岳部の遭難について書かれた文は、ヤマケイ文庫の日本人の冒険と「創造的な登山」 にも掲載されているようです。

武田文男「山で死なないために」

「山で死なないために、あるいは山が死なないために、私たちはどうしたらいいのかをみんなで考える一助になればという気持ちで編集した」というこの本では、冒頭に武田氏自身の苦い経験が記されています。

氏は過去何度も訪れた甲斐駒の鋸岳を、鋸岳北面の林道から釜無川源流の中ノ川から上り、七つ釜経由で鋸岳〜横岳峠〜林道の出発点へ戻る行程を日帰りで計画。

鋸岳から横岳へ至る途中の三角点ピーク(2607メートル)でルートを誤りビバーク、翌日濃霧のなか下降を始めるも迷い、2時間あまり彷徨った挙句、リング・ワンデリング(輪形彷徨)で出発点の三角点ピークに戻ってしまいました。

氏はこの時の失敗を "なによりも、磁石を持参しなかったのが第一のミスだ" としています。

最新機器と外道クライマー

上記の2冊はおっさん世代の自分から見ても過去の話で、当時はGPSもスマホもありませんでした。

「外道クライマー」を自認する宮城公博氏は、著書外道クライマー のなかで、Googleの地形図と衛星写真を眺めながらタイ国での沢登り計画を立て、その道中で(不本意ながら携行した)GPS機能の付属する衛星携帯電話を紹介していますが、一番頼りにしたのは同行者の知人のつて、、で入手した地形図でした。

機器類の進歩が目覚しくとも、地図の有効性に勝るものはまだ出現していないように思われます。

諸兄につきましても地図運用に際してはマップケースやコンパスと合わせて使い、安全で楽しいアウトドアライフをお送りくださいませ。

2020.07

↑ ページトップへ