PC-8801FH|ユーザーズガイドの旅|カセットテープレコーダー編
PC-8801FHには「USER'S GUIDE」「n88-BASIC/n88-日本語BASIC REFERENCE MANUAL」「PROGRAMMER'S GUIDE」の3冊のマニュアルが付属します。
自分はPC-8801mkⅡ_model30(フロッピーディスクドライブ2台)が初めて使ったPCで、その後PC-8801mkⅡSR以降対応のゲームソフトが増えてきたため、当時のマイコン雑誌の通信販売業者の広告で中古のPC-8801FHを見つけ、PC-8801mkⅡを下取りに出して買い換えました。
その後使わなくなったPC-8801FHは実家に置きっ放しになり、本体、モニター、キーボードは処分されてしまいましたが、フロッピーディスクやマニュアル類、関連冊子は処分を免れたため、これを自宅へ持ち帰りました。
蔵書の電子書籍化(自炊)はほぼ完了しましたが、88のマニュアルや冊子類など、やはり電子化したくないものもあり、それらのみ書棚へ並べてあります。
当時はゲームにばかり夢中になり、マニュアルなどロクに見もしなかったのですが、この度改めて見てみたらいろいろ新たな発見がありました。
== 目次 ==
- 1.PC-8801FH|カセットテープレコーダー
- 2.PC-8801FH|市販のカセットテープ版ソフトを使う
- 3.ラジオ放送でBASICプログラムの配信
- 4.カセットテープレコーダ・インターフェイス
・一般のカセットテープレコーダーでも使える
・PCキーで設定を確認
・デモストレーションテープ
・デモストレーション・データの読み込みから実行
・プログラムのセーブ
・プログラムのロード
・プログラムのチェック
・BASICのみで立ち上げるもの
・BASICと機械語で立ち上げるもの
・注意書き
・パソコンサンデーでも
・入出力インターフェイス情報
・2020年にカセットテープの新作ゲームが販売される
1.PC-8801FH|カセットテープレコーダー
自分はPC-8801mkⅡの時からフロッピーディスクを使っていたので、フロッピーディスク普及前に使われていたカセットテープレコーダーでのデータの読み書きなどをしたことはありませんでした。
同級生が使っていたFM-7というPCで、データの読み込みを見せてもらったことがありましたが、あのテープの読み込み音をとても新鮮に聞いたのを思い出します。
一般のカセットテープレコーダーでも使える。
今でもオークションサイトなどではカセットテープのデータレコーダーなどが出品されていますが、こういったPC用のデータレコーダーでないとデータの読み書きに使えないと思っていました。
しかし、ユーザーズガイドを読むと、普通のラジカセでも使えるようなのです。
PC-8801FHに付属するテープレコーダー用のケーブルには黒、赤、白の3色の端子があります。このうち黒色の端子がリモート端子で、「一般のカセットテープレコーダーの場合」として、リモート端子(REM-黒色の端子)はつながず、赤(マイク端子-CMT IN)、白(イヤホーン端子-CMT OUT)端子のみ繋げば良いそうです。
PCキーで設定を確認
電源投入時にPCキーを押しながら立ち上げると(もしくはPCキーを押しながらリセットボタンをおすと)セットアップモードになります。
PC-8801FHのmodel_10とmodel_20、30では初期設定が違います。
カセットテープ版のソフトウェアを使う場合は、「立ち上げモードを → BASICに」、「システムの立ち上げは → ROMに」、「DELコードを → 有効」にする必要があります。
また、基板から充電池を除去している場合は、コンセントから電源コードを抜いていたら、再度電源コードを繋いで88を立ち上げると初期状態に戻っているので、その都度設定する必要があります。
デモストレーションテープ
PC-8801シリーズには機種ごとに様々なデモストレーションプログラムが付属します。
PC-8801mkⅡではFDDのないmodel_10のデモストレーションプログラム(カセットテープ版)とFDDを搭載するmodel_20や30に付属するデモストレーションプログラム(FD版)では内容が違うのですが、PC-8801FH版のデモの場合はどうなのでしょうか。
デモストレーション・データの読み込みから実行
もし幸か不幸かPC-8801FHのデモストレーションプログラムのカセットテープを手に入れた方がいて、使い方がわからないといけないので、以下に記します。
1.端子類を接続
2.88の電源を入れ、おなじみの「How many files(0-15)?」が表示されたら、「Returnキー」を押して「〜●●●●●Bytes free / ok」と表示させてから、A面を再生できるように巻き戻したテープをセット。
3.88で「load "cas2:demo"」と打ち込み「Returnキー」を押し、ラジカセの再生ボタンを押す。
4.しばらくすると画面に「Found:demo」と表示され、右上に「*」が現れる。(読み込み中)
5.しばらくすると画面に「Ok」と表示されるので、ラジカセの停止ボタンを押す。(読み込み終了)
6.「run」と打ち込みリターンキーを押して実行します(F5キーでもOK)。
※.途中で「Tape read ERROR」と表示されてブザーがなったら読み込み失敗なので最初からやり直しです。また、音量は大きくした方が読み込みはうまくいくようです。
プログラムのセーブ
88などが使われていた当時、プログラムブックなどが売られていて、これに書かれているBASICなどのプログラムを打ち込んでゲームなどを楽しんでいました。
しかしハードディスクなどなかった当時は、フロッピーディスクなどの記憶媒体などに手打ちしたプログラムを保存しておかなければなりませんでした。
今どきそんなことをする奇特な方のために、カセットレコーダでのセーブ方法です。
1.端子類を繋ぎ、巻き戻したカセットテープをセット。
2.再生ボタンや早送りボタンで、カセットテープの磁性体部分まで空送りする。
3.88画面上で「save "cas:●●●●●"」と打ち込んでReturnキー押下。(●●部分は任意)
4.ラジカセの録音ボタンを押す。
5.88に「Ok」と表示される。
6.ラジカセの停止ボタンを押す。
※.SAVE命令入力は「save "cas2:●●●●●"」でもできるそうです。違いはデータ転送速度で、cas2はcasの2倍時間がかかるそうです。
プログラムのロード
今度はカセットテープにセーブしておいたデータのロードです。
1.端子類や巻き戻したカセットテープをセットする。
2.88でLOAD命令「load "cas:●●●●●」を入力。Returnキーを押下。
3.ラジカセの再生ボタンを押す。
4.テープが回り始め、プログラム「●●●●●」が見つかるとディスプレイに「Found:●●●●●」と表示され、画面右上に「※」があらわれます。
5.指定したプログラムが見つかる前にそれ以外のプログラムが見つかると、「Skid:○○○○」と表示され、指定したプログラムを探し続けます。
6.「OK」と表示されると読み込みの完了です。
7.ラジカセの停止ボタンを押す。
※.プログラムをSAVEするときに「save "cas2:●●●●●"」としたならば、ロードするときも「load "cas2:●●●●●"」としなければいけません。
※.途中で「Tape read error」と表示されブザーが鳴ったり、ディスプレイ画面に「※」も「Found:●●●●●」も表示されない時はケーブルの接続やラジカセの音量などを調節するなどしてやり直してください。
プログラムのチェック
プログラムをセーブした後は、セーブがうまくいったかどうか確認します。
1.ロードのときと同じ操作をし、命令文を「load? "cas(またはcas2):●●●●●"」とし、Returnキーを押すとチェックが始まります。
2.目的のプログラムが見つかると「Found:●●●●●」と表示され、プログラムのチェックが始まります。
3.カセットテープにセーブされた内容が正しければ「Ok」、正しくなければ「Bad」と表示されます。
4.「Bad」と表示された場合はセーブをやり直します。
2.PC-8801FH|市販のカセットテープ版ソフトを使う
ユーザーズマニュアルには「市販のソフトウェアを使うために」と題して、カセットテープ版のソフトの読み込み方も解説がありますが、市販のソフトウェアには「BASICのみで立ち上げるもの」と「BASICと機械語を使ってたちあげるもの」の2通りあるようなのです。
ユーザーズマニュアルには基本的な手順として以下のやり方が紹介されていますが、「詳しくは各ソフトウェアのマニュアルをご覧ください」とも書かれています。
BASICのみで立ち上げるもの
ユーザーズマニュアルには、BASICのみで立ち上げる場合として「load,runなどの記述があり、mon,rなどの記述がないもの」とされています。
1.ラジカセなどとコードを繋ぎ、PC-8801FHの前面にあるハードスイッチでソフトに対応するモード(V1S、V2H、V2など)に切り替えて電源をいれます。
2.ディスプレイに「How many files(0-15)?と表示されたらリターンキーを押して「〜●●●●●Bytes free / ok」と表示させます。
3.読み込む面で巻き戻してあるカセットテープをラジカセなどにセットします。
4.BASICでプログラムを読み込むため、「load "cas:"」と打ち込みリタンキーを押します。
5.ラジカセの再生ボタンを押します。
6.プログラムの読み込みが終了すると「Ok」と表示されるのでラジカセの停止ボタンを押す。
7.88で「run」と打ち込みリターンキー押下でプログラムをスタートさせます。
BASICと機械語で立ち上げるもの
ユーザーズ・マニュアルではBASICと機械語で立ち上げる場合として「load,runなどの記述があり、mon,rなどの記述もあるもの」とされています。
1.ラジカセなどとコードを繋ぎ、PC-8801FHの前面にあるハードスイッチでソフトに対応するモード(V1S、V2H、V2など)に切り替えて電源をいれます。
2.ディスプレイに「How many files(0-15)?と表示されたらリターンキーを押して「〜●●●●●Bytes free / ok」と表示させます。
3.読み込む面で巻き戻してあるカセットテープをラジカセなどにセットします。
4.機械語モニタモードに入るため、キーボードで「mon」と打ち込みリターンキーを押します。
5.機械語でプログラムを読み込むため、「r」と打ち込みリターンキーを押します。
6.ラジカセの再生ボタンを押します。
7.プログラムの読み込みが終了すると、「 h] 」と表示され、カーソルが点滅するので、ラジカセの停止ボタンを押します。
8.「コントロールキー」を押しながら「B」をおしてBASICモードに戻します。
9.BASICでプログラムを読み込むため、「load "cas:」と打ち込みリターンキーを押します。
10.ラジカセの再生ボタンを押します。
11.プログラムの読み込みが終了すると、カーソルが点滅するのでラジカセの停止ボタンを押します。
12.BASICプログラムをスタートさせるため、「run」と打ち込んでリターンキーを押します。
※.機械語でプログラムを読み込む命令の「r」ですが、後述するゲームソフト「NEW CITY HERO」などの動画や、他にもネットの書き込みで「L」を打ち込むというのを散見しました。もしかしたら「L」なのかもしれません。
注意書き
ソフトウェアによってはプログラムスタート後にカセットテープから機械語プログラムやデータを読み込むものがあるそうで、その場合はタイミングよく(ソフトウェアの指示などの時、という意味かな?)ラジカセの再生ボタンをおさなければいけないようです。
このタイミングを逃すと、「run」と打ち込みリターンキーを押してもプログラムがスタートしないことになるようです。
その場合は「run」+リターンキーを押した後、再度ラジカセの再生ボタンをおすとプログラムが動くことがあるようです。
3.ラジオ放送でBASICプログラムの配信
先日、サーフィンしていて ネット記事をみていて、Gigazineというウェブ・サイトの以下の記事にたどりつきました。
『かつてゲームを「ラジオ放送」で配信する時代があった』https://gigazine.net/news/20181109-people-download-game-from-radio/
同記事によれば、1983年のイギリスでジョー・トーザー氏が米国の女優シェリル・ラッドの写真の画像コードをシンクレアZX81とBBC Microというマイコン向けに書きラジオで放送配信しました。氏はその後もミニゲームや、アプリを配信したそうです。
他にもサイモン・N・グッドウィン氏によるクリスマスカードアニメーションのBASICプログラムの配信や、オランダのラジオ番組「Hobbyscoop」では、コンピュータごとのコード翻訳アプリを開発し、これにより違うマイコン向けでも1つのプログラムを放送すればよくなったこと。
セルビアのラジオ番組Ventilator202が1983年から1986年までの間に150ほどのミニ100百科辞典やゲーム、飛行シュミレーターなどのプログラムを配信した実績などが紹介されています。
ラジオであの「ピーガーピーガー」という音をカセットテープに録音して、マイコンで読み込んでいた方がどのくらいいらっしゃったのでしょうか。
パソコンサンデーでも
そして日本でもテレビ番組「パソコンサンデー」の副音声でプログラムデータの配信がおこなわれたことがあるようなのです。
自分はパソコンサンデーが放送されていた当時、父の方針で家庭内にテレビがありませんでしたので、パソコンサンデー自体を知りませんでした。
4.カセットテープレコーダ・インターフェイス
PC-8801シリーズでは、PC-8801FHを最後にカセットテープレコーダ・インターフェイスは廃止されました。
「PC-8801FHを持っているが、カセットテープレコーダ・インターフェイスへ繋ぐコードがない。だからカセットテープを介してプログラムの読み込み書き込みができない。」
そんな方がいらっしゃるかもしれませんので、ユーザーズマニュアルに記されているインターフェイス情報を転記します。
入出力インターフェイス情報
- 1.書き込み方式 → マーク2400Hz、スペース1200HzのFSK方式
- 2.スピード → 600bps / 1200bps
- 3.リモートコントロール機能 → カセットテープレコーダのリモート端子を利用することによって、テープの自動スタート/ストップが可能。
- 端子番号1.→ 信号名=NC → 使用しない
- 端子番号2.→ 信号名=GND → 信号グランド
- 端子番号3.→ 信号名=NC → 使用しない
- 端子番号4.→ 信号名=CMTOUT → カセットテープ書き込み信号 → 出力 → プラグの色=赤 → テープレコーダ端子=マイク端子(CMTIN)
- 端子番号5.→ 信号名=CMTIN → カセットテープ読み込み信号 → 入力 → プラグの色=白 → テープレコーダ端子=イヤホーン端子(CMTOUT)
- 端子番号6.→ 信号名=REM+ → リモート(モータのON/OFF)→ プラグの色=黒 → テープレコーダ端子=リモート端子(REMOTE)
- 端子番号7.→ 信号名=REM- → リモート(モータのON/OFF)→ プラグの色=黒 → テープレコーダ端子=リモート端子(REMOTE)
- 端子番号8.→ 信号名=NC → 使用しない
カセットテープレコーダの接続ケーブルが無いから自作する、という方がいらっしゃいましたら、何かの役に立てば幸いです。
2020年にカセットテープの新作ゲームが販売される
自分は「レトロPC修理の教科書」で紹介させていただいた岩崎浩文氏のツイッターをよく拝見しているのですが、ある時「NEW CITY HERO」というゲームソフトが紹介されていました。
このゲームソフトが「BEEP秋葉原」でパッケージ版として2020年3月27日に発売されました。
こういうことがあると、押入れの中に眠っているレトロPCを引っ張りだして弄るきっかけになるかもしれません。